現在、国際社会から、人権弾圧を非難されている中国は、対外的に四面楚歌の状態にあります。歴史を振り返ってみれば、1989年に「天安門事件」を引き起こした中国共産党が、国際社会からの厳しい批判の対象となったのは、記憶に新しいことです。1991年にソビエト連邦が崩壊、共産主義イデオロギーは終焉を迎えました。正に、天安門事件の当時は、中国共産党は危機に陥っていました。この危機の打開を企図して、江沢民は1992年4月に訪日、その後、1992年10月、天皇皇后両陛下が訪中されたのです。これは何を意味するのか?国際社会で孤立し、四面楚歌だった中国に、 天皇訪中が西側諸国による対中制裁の緩和を招来したのです。上手く手球に取られた日本政府は、手痛い仕打ちを中国から蒙ります。中国は1994年、「愛国主義教育実施要綱」を制定し、反日教育を徹底させていくのです。来春、「習近平の国賓来日」が実現すれば、一体どうなるのか。本稿では考察して参ります。
天皇陛下と弾圧者・習近平
来春、習近平の国賓来日が実現すれば、国際社会に、どう受け止められるでしょうか。かつて無い弾圧者と、天皇陛下が並んで写真に写るとしたら、諸外国は、どんな感情を抱くでしょうか。天皇陛下には何の非もないことながら、世界諸国の感情は、どう変化するのか。この結果として、中国は外交的な孤立を突破するために、天皇を政治利用するのは目に見えています。その上、日本は、諸外国に誤ったメッセージを送りかねないのです。事実、天皇との会談を、中国は巧みに利用するでしょう。冒頭で述べたように、江沢民訪日により、天安門事件に対する国際世論の反撃は、影を潜めていきました。中国共産党は、対外的な危機の打開に、うまうまと、天皇陛下を利用するに相違ありません。
習近平の訪日のタイミング
来春、訪日予定の習近平ですが、100万を超えるウイグル人弾圧、チベット人虐殺、法輪功の人々に対する臓器狩り、そして香港デモ弾圧など、枚挙に暇が無いほど悪逆非道を働いています。対中ODAは本年10月を持って終了しましたが、総額7兆3000億円が血税から支出されて来ました。ODAの実施には、ODA大綱にて「民主主義抑圧」や「軍事増強」に歯止めが掛けてあった筈です。対中ODAには7000億円5年分を一括供与など、特例措置が取られて来たのも看過出来ません。 今の中国は覇権主義を標榜しています。現状の中国内政・外交を見ればどうか?国内では人権弾圧と虐殺、対外的には近隣諸国との軍事的緊張を招来しています。このタイミングでの国賓来日がもたらす結果は、最悪だと私は考えます。
国賓来日を強行する理由
先にも見た通り、対中ODAを無秩序に続けた結果、ODAの本来の趣旨に反して、中国は軍事的膨張を遂げ、民主主義弾圧国家と成り下がりました。 ODA利権は、相手国のみならず、日本の政治家や官僚、業者にも大きなキックバックを生んで来ました。親中派を名乗る中国への傾斜は利権無しには説明が付きません。この問題(国賓来日)に関しては、政府与党内からも擬問の声が上がっています。 「日本の尊厳と国益を護る会」 を結成した40名の自民党議員や、 佐藤正久前外務副大臣などが反対の声を上げています。この件に関し、 2019年11月7日の外交防衛委員会で、参議院議員の山田宏氏が質問に立っています。日中関係について詳しく質した山田氏に対し、国務大臣である茂木敏充氏は以下のように応答しています。
「日中関係が完全に正常な軌道に戻ったと。過去、首脳間の往来というのはほとんど行われずに、正常な意思疎通が難しい状況が続いた時期がありましたが、昨年、首脳・外相間の相互往来が実現すると、定期的なハイレベルの接触が行われるようになり、懸案を含めて率直な意見交換を正常に行うことができるようなことになったと。さらには、二国間関係だけではなくて、国際社会における様々な課題についても、この日本、中国、解決していく上で共に責任を持つ、こういう責任感についても共有をすると」
これは、事実誤認も甚だしい。山田氏の防衛省に対する質疑に対し、 政府参考人である菅原隆拓氏は苦し紛れに以下の様に答弁しています。
「 中国機に対するスクランブルは近年増加傾向にございまして、平成二十七年度が五百七十一回、二十八年度が八百五十一回、二十九年度が五百回、三十年度が六百三十八回となっております。また、この四か年平均で、全体の約六割と最も高い割合を占めているところでございます。なお、今年度上半期の中国機に対するスクランブル回数は三百三十二回と、過去数年と同じ水準になっているところでございます。 」
国家的な対話ベースが確立されたと、国務大臣である茂木敏充氏は主張しますが、中国による人権弾圧に関しては、「承知している」と述べたままでした。これは、余りにも無責任な回答と言わざるを得ません。習近平の国賓来日を強行に主張する議員(キーパーソン)も居ます。衆議院議員の二階俊博氏です。紙幅の関係で詳述しませんが、二階氏は、親中派の首魁です。先日も、「習近平氏の国賓来日は当然のことである」として、主張を曲げませんでした。私は、二階派の思惑が習近平の国賓来日に関与していると考えています。
この記事のまとめ
中共による、天皇陛下の政治利用は言語道断です。四面楚歌の中共に対し、先だって手を貸してしまった日本が蒙った国益の損失は甚大です。 江沢民、李鵬らの共産党指導者は、スペインの裁判所の審理を経て、チベット人虐殺の当事者として、国際刑事警察機構に”人道に対する罪”を理由に国際指名手配を通告されています。2013年のことです。 世紀の虐殺者である、江沢民を”国賓”に呼んだ過去の愚を、繰り返してはならないと私は考えます。私は、習近平の国賓来日に、強く反対の立場を取ります。 「香港問題」「邦人拘束問題」「尖閣問題」 等を鑑みるならば、日中は、嘗てないほど険悪な要素に満ち溢れているからです。
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