2018年に出版された、「 Silent Invasion: China's Influence in Australia」― Clive Hamilton によると、CCP(中国共産党)による、オーストラリアへの政治工作が浮かび上がって来ます。CCPは代理人(実は中共の工作員)を通じて、オーストラリアの政界や企業を雁字搦めにしているのです。 中国系メディア、学術機関、ネットを通じた世論工作、政界工作は多岐に渡り、今なお、オーストラリアを苦しめています。それを裏書きするのが、 中国のスパイだった王立強が、香港と台湾、豪州で行っていた諜報活動を暴露し、オーストラリアに亡命して、 豪州保安情報機構に中国の驚くべきスパイ活動を公開した事件です。王立強はスパイではないとの見解がありますが、中国当局への何らかの関与があったと見ていいでしょう。
話を日本に移します。オーストラリアのスパイによる工作は、対岸の火事ではないのです。日本に於けるスパイ事件に関して言及すると、中国大使館の一等書記官がスパイを働いた疑惑が大きく報じられました。彼は人民解放軍に於いて、情報参謀部の人間だったのです。
李春光事件(参照―Wikipedia
本稿では、中共のスパイ活動の実態に迫り、無防備な日本国家に警鐘を鳴らしたいと考えます。
恐るべき中国の政治工作条例
中国は先ず、「世論戦」で挑んで来ます。詰まり世論操作や自国の士気高揚、敵対国の政治的弱体化を狙って世論戦を展開してきます。次に、「心理戦」で挑んで来ます。欺罔や虚偽、デマや恫喝などによって、相手国を疲弊させるのです。最後に、「法律戦」によって、自国の軍事的活動を正当化するというものです。例えば、尖閣諸島での船舶衝突などは、偶然では無かったのです。有事に自国民を好き勝手に操ることの出来る、「国防動員法」も正に、「法律戦」を体現していると言ってもいいでしょう。
中共の諜報活動は以下に絞られます。先ず、政治、防衛関係、マスメディア、通信機器などです。勿論、日本に於ける反中組織も中共の調査内容に含まれています。特に狙い撃ちにされたのは、防衛関係者です。 2007年にはイージス艦システムの設計図が中共に漏れ、 2013年には 「防衛省情報本部情報漏洩疑惑 」を巡って無実を主張する、 防衛省情報本部の大貫修平3等陸佐が提訴を起こしています。
現在、分かっているだけでも、日本国内には5万人の中国共産党員が存在し、中共は、在外党員への「調査」と「報告義務」を負わせています。
この種の報告は、対象が「国家安全部」である点に注意したいところです。詰まり、日本の情報は、残念ながら中共に筒抜けだと言ってもいいでしょう。国防動員法が発令されれば、日本に住む80万人の中国人が、国防の義務を負わされているのです。
情報収集と諜報活動を推進する中共
2004年に尖閣諸島へ中国人活動家が上陸する事件では、沖縄の在日中国人が関与していた事実が明るみになっています。 2010年6月には「日籍華人聯誼会」が発足し、中共は、日本に在住する日本籍の中国人の、組織的な動員を可能にしました。ここで問題になるのが、政治家の二重国籍問題です。国家安全保障など、重大な案件に関して、いずれの国の国益に立っているのか不明確だからです。Counter Intelligenceを高めても、政治家が機密を漏洩するなら意味がありません。
情報漏洩は、法的にはどうなのか?Wikipediaによると、「 日本にはイギリスの公職秘密法のような政治家からの情報漏洩を罰する法律は存在せず、機密情報を漏洩させた場合、一般職公務員であれば国家公務員法に触れるが、もし大臣・副大臣・顧問などの特別職公務員が漏洩させた場合には、刑事罰はない 」とあります。詰まり、ザルの様なものなのです。
中共が各国大使館や領事館の機能を高めているのは、こうしたロビー活動や産業スパイ支援など、多面的に情報収集と諜報活動を推進する一環だと見ていいでしょう。
この記事のまとめ
スパイ防止法は急務ですが、特別職公務員にも法の網を掛けないと、意味がありません。スパイ容疑で、法人拉致が横行する中国に対し、毅然とした態度で臨めないのは、日本側の、こうした法的不備が源因です。早急に改善すべきではないかと思います。本稿は、既刊資料を参考に、分りやすく咀嚼したものです。
参考文献―実は身近にいた中国共産党スパイ 拳骨拓史著
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