香港の人権問題の核心を成す、英国の英断を、私は大歓迎します。英国は香港市民に対し、「将来的に、290万人もの英国市民権を付与する」と宣言したのです。中共による、「国家安全法」の成立に伴い、香港の民主主義を護り抜くと、英・ジョンソン首相は強い決意を表明しています。つまり、香港人民は英国市民権を得て、その庇護下に入ることが出来る。中共が香港市民を弾圧すれば、それは直ちに、「英国市民」への暴力となることを意味するのです。また、英国は、アメリカを始めとする5カ国間(ファイブアイズ)で、難民問題の解決に向けて、対話を開始しています。米中関係に目が行きがちですが、英国の動きも見過すことは出来ません。これは画期的と言っていい措置です。英国は「香港を見捨てない」と、強く主張しており、恐らく習近平は、香港問題に於いて、政策上の袋小路に入っていると見られます。国家安全法を強行し、香港の民主制度を破壊しようと画策した中共の野心は、米英を始めとする大国に、粉砕される可能性が出てきたのです。中共が、香港在住の「英国市民」に発砲すれば、どうなるか。英国が黙視する筈は無く、国の総力を上げて、英国は中国を叩く筈です。それだけ強い決意を、英国は香港に約束している。中国を牽制する為に、共同声明を出した英国は、日本からの100名を超える議員の賛同者を得て、中国による人権侵害の可能性に言及し、何があっても香港の民主制度を守り抜くと、強い意志表示をしています。本稿では、香港と英国の動きを中心に、香港問題について詳述していきます。
中英共同声明を反故にした中国
1980年代に、鄧小平は英国に、香港の自治を約束し、一国二制度を50年間維持する旨、宣言していました。鄧は司法の独立や民主制度、自由主義や資本主義経済を容認し、香港の高度な自治を保つと声明を発表していました。然しながら2014年、中国は、この約束は無効であると、一方的に英国に通告し、香港の自治を破壊しにかかります。香港ではデモが散発し、中国当局との軋轢は熾烈を極めていきます。1997年の英国から中国への返還の際、一国二制度が担保され、今まで香港は自由主義を保って来ました。50年間を目処に、香港には高度な”自由”が約束されていたのです。周知の通り、香港は民主的且つ自由主義経済圏にあり、国際的な金融市場の一翼を担って来ました。然しながら、西側諸国と人権の普遍的な価値観を共有する香港は、中共の膨張主義的な振る舞いとは、水と油の関係でした。チベットやウイグル、内モンゴルを始めとする周辺諸国を侵略し、半世紀をゆうに超える弾圧と民族浄化を継続してきた独裁者の中共が、香港にも魔手を伸ばすのは時間の問題だったのです。世界がコロナ禍に苦しむ様を好機とばかり、遂に、習近平は全人代で「国家安全法」を成立させ、香港の自治と自由を根底から破壊する暴挙に出たのです。国際社会への約束を、公然と破った中国は、米英を中心とする大国を敵に回す愚を演じたのです。
香港こそが自由主義の最後の砦
以下は、過去の記事からの引用です。
私は、香港こそが、大陸に於ける自由主義の最後の砦だと考えています。香港の民意が懐柔され、自由が破壊されることは、決して他人事ではありません。香港は今、かつてない激動期に差し掛かっています。香港に於ける中共の専制は、弾圧と殺戮を通じて達成されつつある。私達日本人の間近で、大きな悲劇が生まれているのです。自由主義陣営に属する私達には、これは異様な光景だと映る筈です。血塗られた中共の圧政は、今、正に、リアルタイムで暴威を奮っている。果たして日本人は、香港の悲劇の傍観者であってもいいのでしょうか。国際社会が、専制国家中国の残虐性を容認したがために、チベットやウイグル、内モンゴルの悲劇が生まれたと言っても過言ではありません。ゆうに120万人を超えるチベット人が虐殺され、100万人のウイグル人が強制収容所に送られたのです。人類は、中共と敵対関係にある。現在の香港問題を考える際には、先ず、初めに、以上の断り書きを綴っておかねばなりません。私達は、意を決して、中共の圧政と戦う覚悟を持たなければならないのです。恐らく、人類史上、類を見ない邪悪な存在である中共を、私達が葬り去らねばならない時期が近付いています。
自由主義と全体主義の闘い
私は、香港で今起きている事象は、自由主義と全体主義の闘いだと考えます。米中の軋轢を持ち出すまでもなく、世界の再編に向けた端緒であると考えています。歴史に学んだ香港の政治家・陳浩天は、”民族自決”の闘いを止めることはないと、主義主張を貫いています。彼の立脚する民族とは、”香港民族”であると、標榜しているのです。と言うのも、世界の対立の構図が、香港を”雛形”として、説明が可能だからです。”民族”の自主独立と主権、自由と公平を求めるデモの意味するものは、無辜の民族を踏み躙る中共の横暴に楔を打ち込む契機なのです。人権を踏み躙るならず者の集団を国家とするのか、自由と博愛に根差した価値を紐帯にするのか、今、正に、世界が直面する問題の縮図を、香港デモが体現しているのです。これは「自由主義」と「独裁」の闘いの構図と言い換えても過言ではない。
「自国民」保護のために
英国の市民権を香港市民が手に入れたら、どうなるか。英国は「自国民保護」の大義を得て、香港沖に、艦隊を派遣する名分が立つ。中共が、迂闊に香港に手を出せば、アメリカのみならず、英国も黙っている筈がない。中共が、香港を武力弾圧すれば、必ず英国艦隊が動くでしょう。中英共同声明違反を名目に、香港を英国連邦に復帰させ、香港を併合すると、英国は宣言することも可能になる。香港情勢は、中共の横暴を破壊する試金石となり、暴威を振るう、中国共産党を追い詰める手段となり得るのです。香港救出の為に、英国は戦争も辞さない覚悟があると、私は見ています。英国は香港に対して、極めて特殊な歴史的関係を有してきました。英中間で戦争が起きるか否かは別として、現状、英国は香港支援を多角的に推し進めている段階です。然しながら、中共が暴発し、無辜の市民を殺戮するならば、香港からの移民を即座に実施するには限界がある。国家安全法の中には、「外国からの干渉を禁止(排除)する」とあり、英国の「英国市民発言」は、中国には「分離主義」と映っている。行き着く果は、英国の後押しを背景とするデモ隊と、人民解放軍の衝突ではないでしょうか。米国が軍事的に関与しない限り、事態の収拾は不可能だと、私は見ています。
この記事のまとめ
本稿で、中共が英国を完全に敵に回してしまったことを、お伝え出来たと思います。習近平が、次にどんな手段を講じるか、現状では定かではりませんが、香港に圧政の手を伸ばす時、英中は、何らかの干戈を交える可能性があり得ます。今後、更に踏み込んで、香港問題を採り上げて参ります。
追記
この記事は、英国の決断を称賛する目的で綴りました。英国が、身を賭して「自由」を護ろうと戦っているからです。300万人の市民の受け入れは、現実的でないかも知れません。然しながら、武漢肺炎の苦境の中、ここまで力を尽くした英国政府と英国国民に、私は敬意と感謝の気持ちを忘れたくないのです。
この記事は、英国の決断を称賛する目的で綴りました。英国が、身を賭して「自由」を護ろうと戦っているからです。300万人の市民の受け入れは、現実的でないかも知れません。然しながら、武漢肺炎の苦境の中、ここまで力を尽くした英国政府と英国国民に、私は敬意と感謝の気持ちを忘れたくないのです。