「日本の尊厳と国益を護る会」は、日本は台湾との関係を強化すべきであり、日台関係の緊密化を推進し、「日台首脳会談」を断行すべきであると主張しています。これは革新的な提言ですが、間違いなく中国共産党を激怒させるのは自明です。何故なら中共は、台湾は自国領だと主張しており、「台澎金馬という一つの地域を統治する政治的実体」と称して、主権国家と認めていないからです。台湾は、中共による脅威に晒され続けて来ましたが、世界の大半の国家は、台湾と実務的な関係を結びつつも、「中華人民共和国」を正統国家として定義して来ました。台湾は中華人民共和国の主権に帰属するものではなく、「中華民国」として独立した国家であることに、現在の台湾国民は、疑念を抱いてはいません。台湾立法院には、泛藍連盟派と、泛緑連盟派が存在し、前者は台湾と中国は同じ漢民族であると主張し、後者は台湾と中国は別個の主権国家であるとの主張を展開してきましたが、台湾の世論の大半が、中国と台湾の関係に関して、現状の変更を望まないとしているために、政府も、現状の安定を優先しています。昨今、アメリカや日本の賛同を得て、コロナ禍を見事に征服した台湾を、WHOの総会にオブザーバーとして招聘すべきとの国際世論が沸き起こりましたが、中共の汚染の進んだWHO組織の判断は、台湾を切り捨てる結果を生んでいます。
主権国家・台湾
私は、台湾が「主権国家」であると考えています。中国の横槍さえ無ければ、国際社会に於いて、台湾は、重要な役割を担えると理解しているからです。中国の圧政に耐えかねた中華人民共和国の民主派が、台湾を「最後の砦」と称して、移り住むのも珍しくありません。普通選挙を実施し、民主国家である台湾は、昨今、経済的にも飛躍的に発展し、既に、自由主義陣営の一翼を担うことが可能です。冒頭で述べた、「日本の尊厳と国益を護る会」の英明な提言は、決して根拠の無い話ではありません。親日的な台湾こそ、日本は官民一体となって重視すべきである。中共の恫喝や妨害があろうと、日台の友好を推進し、台湾(中華民国)を「独立国家」として認めるべきです。台湾の選挙史は、日帝統治下に遡ることが可能です。制限選挙ではありましたが、「三一法」により協議員が選出された歴史がある。1945年に至って、台湾では普通選挙が実施され、1990年以降の民主化の下、中華民国の主権を再確認し、台湾は民主主義国への転換を見事に果たしたのです。血塗られた弾圧と虐殺を繰り返す中国共産党政権と、開明的で民主主義の根付いた台湾と、どちらが国家として正常でしょうか。答えは自明の筈です。
日台首脳会談
自然災害によって日本が苦境に立つ度に、支援を惜しまなかった台湾こそ、日本の真の友である。日本の「国賓」の名に相応しいのは、習近平ではなく、蔡英文その人ではないでしょうか。「日本の尊厳と国益を護る会」が「日台首脳会談」を提言するのも、あながち誤った判断ではない。但し、尖閣諸島は台湾に帰属するとの主張は認められない。仮に、経済的利益は日本と共有すると称しても、尖閣諸島は日本の国土であり、蔡英文の主張は誤っているのを指摘しておきます。恐らく、外交的な対話で解決可能な、日台間の尖閣に関する主張のズレ以外は問題が無く、知日派で2016年に発足させた蔡英文は、今のところ、順調に政権を維持しています。日華議員懇談会と称する、日台関係の友好・進展を目指す団体があり、超党派の議員に参加を呼びかけていますが、私はあまり、この団体を推奨する気になれない。参加しているメンバーを洗ってみると、嫌がおうにも問題が目立つ。詳述はしませんが、やはり、国を真剣に憂いているのは「日本の尊厳と国益を護る会」であり、「日台首脳会談」という、大胆な提案が出来るのも、「護る会」ならではの、意志の強さからではないでしょうか。
媚中派議員への掣肘
「一つの中国」を企図する中国は、蔡英文のきめ細かい外交政策に過敏になっています。2015年、恐らく非公式に安倍首相と蔡英文が会談したと、漏れ伝えられていますが、公式に日台で首脳会談をやれば、中国の面子は丸潰れになる。安倍首相が、蔡英文と公式に会談する可能性は限りなくゼロに近いと言えますが、それでも敢えて、「日本の尊厳と国益を護る会」は「日台首脳会談」を提言しています。これは異例の宣言であり、大胆且つドラスティックな言説だと言ってもいい。実現すれば、日中関係は最悪の事態を迎えることが予想され、中国は国の総力を賭けて潰しに掛かる筈です。然しながら、この提言は、国内の媚中派議員の度肝を抜き、彼等を掣肘するのが可能となり、間接的に国益に利することにもなる。自民党の有志に留まらず、アメリカも台湾への傾注にシフトし始めている。対中関係に於ける諸問題に関し、いずれ、日台間の協力関係も、視野に入れなければ嘘である。私は、そう結論づけています。
この記事のまとめ
蔡英文政権には、極めて優秀なブレーンが存在するそうですが、今、台湾は追い風に乗っている。コロナ禍を早期に制し、国際的な威信を高め、日米欧の後押しがある、日帝統治下に流行った歌を、台湾人の老人が唱揺することもあるそうです。真に友人たらんとするならば、水面下で肚の探り合いをするのではなく、国難に於いて温かい心遣いが出来るかどうかが、分かれ目です。習近平は、来日にあたって、日本国内の世論工作を求めているようですが、果たしてこれが、真の友情や信頼を生むとは思えない。中国の脅威下にある点では、日本も台湾も同じ境遇にある。「日本の尊厳と国益を護る会」の提言は、私達に、誰を本当に「友人」にすべきか、示唆しています。いずれ、日台関係は花開く。副題の、「変わりつつある日台関係」が実現する日も、そう遠くないと、私は最後に指摘しておきます。
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